Project Story 01
どこよりも“熱い”
スポーツニュースを届ける。
テレビ朝日「報道ステーション」
スポーツコーナー
担当ディレクター:テレビ制作局テレビ制作部
田中 啓介
※2019年当時
「ほかの番組にはないもの」をとことん追求、
オンエア間際までVTRの内容をブラッシュアップ。
「報道ステーション」は、言わずと知れたテレビ朝日の看板番組。約1時間20分の番組では、政治、経済、国際情勢など、その日世界中で起きたさまざまなニュースが伝えられる。その中で、番組全体の視聴率を左右する、約15分のコーナーがある。人々の心を熱く感動させる、スポーツコーナーだ。文化工房は、その制作を2004年の番組開始当初から担当している。
文化工房とテレビ朝日のスポーツニュース制作には、40年にわたる長い歴史がある。1979年にENG取材と編集業務の技術協力を始め、1990年頃には、特定の競技のニュースを作って各報道番組に出稿する「競技付きディレクター」を派遣するようになった。さらに1995年から、報道ステーションの前身番組「ニュースステーション」のスポーツコーナーの制作に参加。そこでの制作ディレクターの働きが評価され、現在の報道ステーションへと繋がっている。
「報道ステーションは、テレビ朝日だけでなく、日本を代表する報道番組でもあります。それだけに、番組に配属になったときは特別な感慨があったし、いまも日々やりがいを感じています。その一方で、ミスが許されないという責任感も感じます」
そう語るのは、2014年から報道ステーションのスポーツ担当ディレクターを務めている田中啓介。2001年にアルバイトとして入社後、報道を経て長らくスポーツ畑を歩んできた。
現在、報道ステーションのスポーツコーナーには、田中をはじめとするディレクター、撮影、編集など、あらゆる業務で多数の社員が関わっている。テレビ朝日の全スポーツニュースの「司令塔」であるスポーツニュースデスクも、そのほとんどが文化工房の社員だ。
田中のディレクターとしての役割は、その日扱うニュースのラインナップに沿って、番組内で放送するVTRの編集をディレクションし、生放送のスタジオ進行を管理すること。番組が始まった後も、スポーツコーナーまでの1分1秒を惜しんでVTRをブラッシュアップし、ギリギリまで編集作業が続く。
「生放送なので、何が起こるかわからないんです。前のコーナーが予定より早く終わってしまいそうになると、さらに作業時間は削られる。毎日、オンエアが終了するとホッとします」
オンエア中のサブスタジオで、ディレクターがテロップ出しやナレーションのキュー出しを行う場合も。
独自の取材で出会った選手の隠されたヒストリー。
何よりも大切なのは「普通につくらないこと」。
田中が番組制作で大切にしているのは、「普通につくらないこと」。独自の視点で取材を進めていくと、思わぬドラマに出合うことがあるのだという。
田中は、福岡ソフトバンクホークスの試合で甲斐拓也捕手を見るたび、ある仕草が気になっていた。
「守備イニングが始まるとき、甲斐選手は必ずホームベースに指で文字を書いているんです。気になったので、あるとき取材に向かうカメラマンに『手元のクローズアップを撮影してきてほしい』と頼みました」
カメラマンが持ち帰った映像を詳しく見てみると、甲斐がベースに書いていた文字は「心」。これをきっかけに取材を進めると、高校時代のエピソードに行きついた。
甲子園を目指した高校時代。野球部に、末期の上咽頭がんを患っていた女子マネジャーがいた。病を抱えながらも部員をサポートするひたむきな姿を見て、甲斐も胸を打たれた。しかしその後、彼女はこの世を去ってしまう……。そのマネジャーが大切にしていた言葉が「心」だったのだ。
「甲斐選手はそれ以来、『自分がいま野球をやれているのは、当たり前のことではない』という思いをこめて、“心”と書いていると言うんです。2017年、彼がゴールデングラブ賞を受賞したときにこのエピソードを思い出し、撮影した映像とともに番組で紹介しました。晴れやかな受賞のタイミングで紹介できたことが、うれしかったですね」
小さな気付きをきっかけに、独自の視点でニュースをつくる能力は、決して田中だけが持つものではないという。選手を観察し、日々の取材で関係を築く。取材で培った知識や視点を生かし、ほかにはないニュースを制作する。そうした能力の高さは、文化工房のディレクターやスタッフに共通したもので、テレビ朝日から寄せられる厚い信頼の礎になっている。
さらに、撮影・編集などの技術部門を含め、文化工房のスタッフは、スポーツ現場を取材する同業他社からの評価も高い。個々が「ほかの番組にないものを」と高めあう姿勢を持ち、“チーム文化工房”として毎日のスポーツコーナーを作り上げているからだ。
田中は文化工房が持つ強みを、こう語る。
「撮影スタッフは、僕の意図を十分に汲み取った上で期待以上の映像を撮ってきてくれる。そして編集スタッフは、カメラが撮ってきた映像素材を気持ちよくつないでくれる……それぞれが、求められた水準以上の仕事をしようという強いプロ意識を持っていることですね」
“チーム文化工房”に対しては、期待値が高いのでうれしい反面、プレッシャーも大きいんです……そう語る瞬間、田中の表情がキリッと引き締まった。
スポーツの熱さや感動を伝えられるニュースにするため、蓄積した情報をフル活用して構成を練る。